
名著 『紛争の戦略』から学ぶアンチ攻略法 【1】イントロ
夜中に音がしたので、銃を握りしめて階段を下に降りていくと、銃をもった強盗と鉢合わせになってしまった。このとき、相互に望まない結果が起きてしまうかもしれない。たとえば、
何事もなくその場を去りたいと 強盗 が望み、また 私 もそうなることを願っていた
としよう。それでも強盗は、
私 が銃を撃つ、しかも先に撃つと考える
かもしれない。いや、強盗は、
強盗 が銃を撃ちたいと 私 が考えるだろうと考える
かもしれない。または、
私 が撃ちたいと 強盗 が考えるだろうと 私 が考えると 強盗 が考えてしまう
かもしれない。そして・・・・・・(以下続く)
流石にこんな状況はめったに起こらないとは思うが、もし強盗と鉢合わせした場合には、相手よりも先に行動する or 相手に行動させない というとっさの判断をする必要がある。とどのつまりは、相手の行動によって自分の行動を変える必要がある(第9章 奇襲攻撃の相互的恐怖)。
また、
1台ならば十分に通れる道路上で、ダイナマイトを載せた2台のトラックが鉢合わせになったとき、道を譲るのはいったいどちらか
という
一方が得をすれば他方が損をする状況
においては、相手と交渉する必要がある。本書の言葉を借りれば、「明示的な交渉」と「暗示的な交渉」を行う必要がある(第2章 交渉について)。
ほかにも
鉄道職員が線路上での座り込みのストライキを行った
とする。この状況で、
【鉄道職員を線路上から追い出す】 or 【決して追い出されないようにする】
ためには 、
【鉄道が決して止まらないようにする】 or 【鉄道職員が線路に体を縛り付ける】
必要がある(第5章 強制、コミュニケーション、戦略的行動)。
ここまでの文章からわかる通り、タイトルの「アンチ」とは、「世間一般の、相手を批判するだけの有象無象」のことではない。
私たちがこれから出会うであろう「競争相手」もしくは「交渉相手」という意味での「アンチ」である。
この記事では、
「無視するべきアンチ」ではなく「無視できないアンチ」に対して有用な情報を
『紛争の戦略 ~ゲーム理論のエッセンス~』
トーマス・シェリング著 河野勝[監訳]
に沿ってできるだけわかりやすく説明していこうと思う。
なぜ『紛争の戦略』を使用するのか
それはこの本が、あまりにも知名度が低く、そして何より内容が難解であるにもかかわらず
「面白い」かつ「確実に有用」だから
である。なぜ知名度が低いのかはこの本を読んでみればわかると思うが、強いて挙げるとすると
● 内容が濃すぎて、途中で胃もたれする
● 登場する数式や図が本当に難解
この2つに尽きると思う。内容自体は面白いし、読み応えがあると言えばそうなのだが、この2つのハードルを越えなければならないのは結構キツイと考えられる。
この本は読まれるべき名著であるにもかかわらず、こんなにも知名度とレビューがないのは悲劇と言っても過言ではない。
この本について、そしてこの本の内容をできるだけ多くの人に知ってもらいたい。そのためにこの記事を書いている。
以降の記事では、
【約束】
【脅し】
【契約】
【奇襲】
【恐怖】
【強制】
【抑止】
などなど、極めて実際的かつ物騒な事柄をかなりわかりやすく、科学的で論理的に説明していくので是非とも読んで欲しい。
本記事では、以降も出てくる重要な単語
「ゲーム理論」と「コミットメント」
についてわかりやすく説明しておこうと思う。
● ゲーム理論
この本ではゲーム理論のことを
2人(2つ)もしくはそれ以上の個人(個体)が、お互いにとっての適切な選択が相手の選択に依存する状況において、何をなすべきかをどのように決定するかについての論理
と説明している。ナルホドわからん。
例え話をしよう。